竣工はまだ半年以上先なのに、テナント募集の資料に完成イメージを載せたいと社内で急に話が進むことがあります。
手元にあるのは設計事務所から届いた図面一式と、打ち合わせで使った白い模型の写真くらい。
そこで初めて外観パース作成をプロに依頼しようと考えたものの、何をどう頼めばいいのか見当がつかず、見積もりの依頼文すら書けずに手が止まっている方も多いのではないでしょうか。
外観パースは、頼み方ひとつで仕上がりも費用も大きく変わります。
この記事では、オフィスの外観パース作成を依頼するときに多くの方がつまずく疑問を、質問と答えの形でひとつずつほどいていきます。
Q. オフィスの外観パース作成、費用はどこで大きく変わる?
費用を左右するのは、建物そのものよりも「どこまで描き込むか」の範囲です。
一般的な目安として、建物単体を1アングルで仕上げるなら数万円台から、周辺の街並みや植栽、人物や車まで作り込み、昼景と夜景の2パターンを用意するとなると十数万円以上になることも珍しくないようです。
同じ5階建てのオフィスビルでも、見積もりに倍以上の差がつくことがあるのはこのためです。
金額の差が生まれる理由は、作業量がアングル数、周辺環境、時間帯、解像度の4つでほぼ決まるからです。
たとえば、3DのCADデータやBIMモデルを渡せる場合は、パースを作る側がゼロから形を起こす手間が減るため、費用も納期も抑えやすくなります。
反対に、手描きのスケッチや紙の図面しかない場合は、モデリングから始まるぶん金額が上がりやすいのが実情です。
見積もりを見て「思ったより高い」と感じても、相手が吹っかけているとは限りません。描く範囲がまだ決まっていないことが原因かもしれません。
オフィスならではの落とし穴として多いのが、用途を伝えずに依頼してしまうケースです。
リーシング資料のWeb掲載用に作ったパースを、あとから工事現場の仮囲いに貼る大判の完成予想図に流用しようとして、解像度が足りずに作り直しになる、という話は決して珍しくありません。
「何に使うか」を先に決めてから見積もりを取るだけで、こうした二重払いはかなり防げます。
そのパースが最終的に使われる場面は、いくつありそうでしょうか。
Q. 図面以外に、何を渡せば思った通りの絵になる?
意図どおりの仕上がりに近づける一番の近道は、図面に書かれていない「決まっていること」を言葉と資料で渡すことです。
パースを作る側は図面から形を読み取れても、外装タイルの色味やサッシの色、エントランスの照明の雰囲気までは読み取れません。
ここが空白のままだと、相手はそれらしい一般的な仕上げで埋めるしかなくなります。
依頼時にそろえたい資料の目安
配置図・平面図・立面図(できれば3Dデータ)
外装材の仕上表やメーカー品番、サンプル写真
敷地周辺の写真と方位
「この雰囲気に近づけたい」という参考画像
見落とされやすいのが、敷地周辺の写真です。
前面道路の幅や隣のビルの高さによっては、実際に人が立てる位置から建物の上半分しか見えない、ということもよくあります。
写真なしで依頼すると、存在しない広場から見上げたような理想的な構図で描かれてしまい、内見に来たテナント候補が実物とのギャップに戸惑う原因になりかねません。
とはいえ、仕上げが決まりきっていない段階で依頼しなければならないこともありますよね。
その場合は、決まっている部分と未定の部分を分けて伝え、未定の部分は「A案とB案の2パターンで」と指定すると、あとからの変更が少なくて済みます。
手元の資料のうち、まだ言葉になっていない「決まっていること」は、どれくらい残っているでしょうか。
Q. 修正で揉めるのはなぜ?どこまで決めておけばいい?
修正のトラブルは、多くの場合「どの段階で何を確認するか」を決めないまま進めたことから生まれます。
外観パース作成は一般的に、構図やカメラ位置を決める段階、形と素材を当てはめる段階、光や添景を仕上げる段階と、いくつかの工程を踏んで進みます。
仕上げまで終わったあとで「やっぱり角度を変えたい」となると、ほぼ最初からのやり直しになってしまいます。
よくある失敗が、担当者だけで確認を進め、最後に役員の一言で方向が変わるパターンです。
担当者としては細かく見てきたつもりでも、「夜景のほうがオフィスらしい」「エントランスをもっと大きく見せたい」といった意見が最終段階で出てくると、決められた修正回数をあっという間に超えてしまいます。
確認のタイミングを依頼する側が決めていないと、修正回数はいくらあっても足りなくなります。
見積もりの段階で、修正は何回までか、どこからが追加料金になるのかを確認しておくと、あとで揉める余地がぐっと減ります。
あなたの社内では、最後に完成イメージへOKを出すのは誰になりそうですか。
Q. どこに頼む?会社と個人クリエイター、見極めの軸は?
依頼先は大きく分けて、建築CGを専門に扱う会社と、フリーランスの個人クリエイターの2つがあります。
専門の会社は大規模な案件や複数カットの一括依頼に強く、進行管理も含めて任せられる安心感があります。
一方で個人のクリエイターは費用を抑えやすく、担当者と直接やり取りできるぶん、細かなニュアンスが伝わりやすいという良さがあります。
無料の3Dソフトで自分で描いてみようと考える方もいますが、外観パースの説得力は、光の角度や人の目線の高さ、レンズの画角といった見せ方の経験で大きく変わります。
同じ建物でも、カメラを数十センチ下げるだけで堂々とした印象になったり、逆に圧迫感が出たりします。
こうした判断を数多くの物件で積み重ねてきたプロに頼むと、自分では言葉にできなかった「こう見せたい」という感覚を、絵として形にしてもらえます。
時間をかけて自作するより、完成イメージをめぐる社内の議論そのものが早く進むことも多いですよね。
個人のクリエイターを探すなら、ココナラのようなスキルシェアサービスで、建築パースを出品している人の過去作品を見比べる方法もあります。
購入前にメッセージで相談できる出品者も多いので、手持ちの図面と写真を見せて「この資料で外観パース作成を頼めそうか、足りないものは何か」を見立ててもらうだけでも、依頼の輪郭がぐっとはっきりします。
社内に建築CGに詳しい人がいない場合、見積もりを取る前の相談相手がいるのは心強いのではないでしょうか。
作品の見栄えだけで選ぶのは、少し危うい選び方です。
住宅の外観パースが上手な人でも、ガラスのカーテンウォールや大きなエントランスの映り込みに慣れているとは限りません。
依頼先を見極める軸は「上手いかどうか」ではなく、「自分の建物に近い作例があるかどうか」に置くと、失敗はぐっと減ります。
候補の作品を眺めるとき、あなたの建物に一番近い一枚はどれでしょうか。
Q. 依頼の前に、今日のうちにできることは?
外観パース作成の依頼は、準備が整ってから動くものと思われがちですが、実際には「足りないもの」を知るところから始めたほうが早く進みます。
今日のうちにできることは、3つだけです。
パースの用途を一行で書き出すこと、手元にある資料を一覧にすること、そして敷地周辺をスマートフォンで数枚撮っておくことです。
この3つがそろえば、専門の会社にも個人のクリエイターにも、同じ条件で見積もりを依頼できます。
条件がそろっていれば見積もりを比べやすくなり、「安いけれど何が含まれていないのか」も見えてきます。
資料が足りない気がして手が止まるなら、その不足自体を相談の材料にしてしまってかまいません。
完成イメージが一枚あるだけで、テナント候補との会話の進み方は大きく変わっていくはずです。
オフィスの外観パース作成は、描く範囲と用途、確認のタイミングを先に言葉にするほど、費用も仕上がりも読みやすくなります。完璧な資料がそろうのを待つより、今ある図面と写真を持ってプロに見立ててもらう、その一歩を決めてしまいましょう。
頼むと決めたあと、すぐに動ける人がどんな順番で行動しているのかは、こちらの記事でも詳しく触れています。