秋のイベント当日、受付のテントから少し離れた案内板の前で、来場者が地図と周りの建物を何度も見比べている姿を見かけることがあります。
しばらく首をかしげたあと、結局スタッフに声をかけて、トイレの場所を尋ねていきます。
配布用の施設地図も入口の看板も用意したのに、同じ質問が一日中続くと、準備のどこが足りなかったのかと考え込んでしまいますよね。
この記事では、施設地図を外注する前に知っておきたい来場者が迷ってしまう本当の理由と、外注先を見極めるポイントをお伝えします。
地図はあるのに、来場者が迷ってしまう
施設地図を用意したのに迷う人が減らないとき、担当者が真っ先に疑うのは地図の見た目かもしれません。
文字が小さかったのか、色がごちゃごちゃしていたのかと、あれこれ思い返してしまうものです。
けれど来場者が迷う原因は、地図のデザインそのものより、地図の置き方や向き、現地の景色とのずれにあることが少なくありません。
たとえば学校の文化祭や地域のお祭りのように、屋外に複数の建物やテントが並ぶ会場では、来場者は地図を見ながら歩くというより、地図を一度見て覚え、あとは周りの景色を頼りに歩くことが多いものです。
そのため、地図に描かれた建物の形や目印が現地で目に入るものと一致していないと、数十歩進んだところで自分の位置が分からなくなってしまいます。
病院や大学のキャンパス、商業施設のように、似た廊下や建物が続く場所でも同じことが起こります。
何度も同じ場所を聞かれると、案内する側の説明不足のように感じてしまいますが、原因は担当者の努力とは別のところにあることも多いのです。
あなたの施設では、来場者はどのあたりで足を止めていることが多いでしょうか。
誤解①「分かりやすい絵なら迷わない」わけではない
よくある誤解が、きれいで分かりやすい絵柄の地図さえ作れば来場者は迷わなくなる、という考え方です。
実際には、同じ地図でも、置かれる場所と向きによって分かりやすさは大きく変わります。
特に掲示板に貼る施設地図は、見ている人の正面の方向が地図の上になるように描かないと、来場者は頭の中で地図を回転させなければならず、そこで方向を取り違えやすくなります。
北を上にした地図を南向きの掲示板に貼ると、見る人にとっては左右が逆になってしまいます。
案内サインの分野では、掲示する場所ごとに地図の向きを合わせる考え方が広く使われていて、駅前や大きな公園の案内板で場所によって地図の向きが違うのはそのためです。
配布用のパンフレットは北を上にしておき、掲示用は設置場所ごとに向きを変えた版を作る、という使い分けも珍しくありません。
地図の中身を考える前に、どこに何枚置くかを決めるだけでも、外注するときの話はずいぶん具体的になりますよね。
誤解②「自分たちに見やすい色」は誰にとっても見やすいとは限らない
もうひとつの誤解は、担当者が見て分かりやすい配色なら、来場者全員にとっても分かりやすいはずだという思い込みです。
色の見え方には個人差があり、日本では男性のおよそ20人に1人が、赤と緑などの区別がつきにくい色覚の特性を持つとされています。
エリアを赤と緑だけで塗り分けた施設地図は、そうした方にとって区別のつかない地図になってしまうことがあります。
多様な来場者を想定するなら、色に加えて、形や模様、文字でもエリアを区別できるようにしておくと安心です。
トイレや授乳室、救護所、車いす用の出入口などは、JISで定められた案内用図記号を使うと、日本語が読めない海外からの来場者や小さな子どもにも伝わりやすくなります。
段差のない通路やエレベーターの位置を示しておくことも、ベビーカーや車いすで訪れる方にとっては、地図が役に立つかどうかの分かれ目です。
自分たちが見落としていた来場者の姿に気づくと、地図に求めるものも少し変わってくるのではないでしょうか。
外注先を見極めるときに確かめたいこと
施設地図の外注先は、見本の絵がきれいかどうかだけでなく、ここまで挙げたような現場の事情をくみ取ってくれるかどうかで見極めることが大切です。
案内サインや施設の案内図の実績がある人や会社は、掲示場所に合わせた向きの調整や図記号の使い方に慣れていることが多く、説明が少なくても話が早く進みます。
費用は規模や描き方によって大きく変わり、イベント会場の簡単な平面図であれば数万円前後から、敷地全体を立体的なイラストで描く鳥瞰図になると、その数倍になることもあるようです。
施設地図を外注して得られる一番の価値は、きれいな絵そのものより、担当者の頭の中にしかない施設の構造を、初めて来た人の目線で描き直してもらえることにあります。
長く関わっている施設ほど、どこが分かりにくいのかを担当者自身が言葉にできなくなっていることが多いものです。
ココナラのようなスキルシェアサービスで施設や会場の地図を手がけている人に、建物の配置図や写真を見せながら相談すると、ヒアリングの中で「この角で迷いそう」「入口が2つあることは伝えたほうがいい」といった形で、自分では言葉にできていなかった迷いの原因を言語化してもらえることがあります。
その言葉が、そのまま地図の設計図になっていきます。
外注先に確かめておきたいこと
施設や会場の地図、案内サインの作成実績があるか
掲示場所や来場者の特徴を聞き取ってくれるか
納品データの形式と、あとから修正できるかどうか
納品後に、別の媒体へ使い回してよい範囲
見落とされやすいのが、納品後の扱いです。
テナントの入れ替えやイベント会場の変更などで、施設地図は思った以上に頻繁に直す必要が出てきます。
画像データだけで納品されると、少しの修正でも毎回依頼し直すことになるため、編集できる形式での納品が可能か、その場合の費用はどうなるかを最初に確認しておくと安心です。
また、外注したイラストの著作権は、契約で取り決めない限り作り手の側に残るのが一般的なので、パンフレットや看板、ホームページなどに使い回したい場合は、その範囲も合わせて伝えておきましょう。
最初の打ち合わせでどこまで聞いておけば安心できそうか、少し想像してみると準備が進めやすくなるかもしれません。
決まっていないことがあっても、外注は始められる
ここまで読んで、掲示する場所も、載せる施設の範囲も、まだ決めきれていないと感じた方もいるかもしれません。
イベントの内容が固まっていなかったり、施設の改修が続いていたりすると、地図に何を載せるかは簡単には決められないものです。
決めきれないのは準備が遅れているからではなく、現場のことを真剣に考えているからこそではないでしょうか。
外注先によっては、決まっている部分と未定の部分を分けて聞き取りながら進めることに慣れているところも多くあります。
来場者がどこで迷っているのか、今分かっている範囲だけを伝えて相談を始め、未定の部分はあとから差し込めるように作ってもらう、という進め方もできます。
すべてが決まるのを待っているうちに、準備の時間のほうが足りなくなってしまうこともありますよね。
来場者が迷わない施設地図は、最初から完成形が見えている人のほうが少ないものです。今は決めきれないままでも大丈夫です。迷わせている原因がまだ見えていないこと、そのものを相談の入り口にしてかまいません。
来場者が迷う原因が地図にあるのか、それとも別のところにあるのか、まだはっきりしないという方は、こちらの記事がひとつの手がかりになるはずです。